去年の今頃、僕は引っ越ししました。
あれから一年経つなんて、本当に早いです。
今の場所は、新宿まで歩ける距離だし、
玄関開けると都庁の夜景が綺麗だし、
商店街に息づく人達、活気が気に入ってます。
引っ越して間もない頃、
僕の上に住むおっちゃんと何故かご飯に行く事になり、
近所にお好み焼きを食べに行きました。
実はこのおっちゃん、
とてもとても神経質なおっちゃんで、
物音に過剰に反応する人らしく、
マンション内ではどうやら嫌われ者らしいのです。
確かに、住む前に管理会社の方から、
「Nさんの上に住む方は、少し神経質で、迷惑がかかるかもしれません。」
と言われた事もありました。
まぁ、でも大丈夫だろうと思い契約して住んで3日後くらいに、
『帰ってきたら私の部屋に来て下さい。』
と玄関に張り紙があって、
挨拶代わりに恐る恐るお邪魔したら、とても感じのいいおっちゃんでした。
その時に話が盛り上がり、
後日お好み焼きを食べに行った訳です。
あれから一年経ち、
あまりにも神経質で何回か口論になった事もありました。
その都度、僕はとことん話合い、ちゃんと和解してきました。
そしておっちゃんは僕には心を開いてくれました。
僕もおっちゃんには何でも話しました。
東京に住んでかれこれ15年経ちますが、
こうして隣人の方とご飯に行ったり、
口論するのは初めてでした。
実際、隣に住んでる方は顔も名前も知りません。
そんなおっちゃんが今日の朝、
6年住んだと言うこのマンションから江戸川の方へ引っ越していきました。
それで朝、律儀に挨拶をしに来てくれたんです。
「君にはお世話になったよ」
「そして迷惑をかけたね」
「僕は独身でずっと一人だった」
「だからこうして君と出会えて、話せて、とても嬉しかった」
「もう、会う事はないと思うが、君の事は忘れないよ」
「仕事頑張ってな」
「最後に本当にありがとう」
って力強く握手してくれました。
僕はその時、
なんでこのおっちゃん、嫌われ者だったんだろうって、
ちゃんと話せばいい人なのになって、
なんかやるせない気持ちになりました。
ビルメンテナンスの仕事をやってたおっちゃんの手は、
とても厚くて、ごつくて、温かい、
いい人の手でした。
そんな今日の朝、
うちのベランダには力強く緑が背を伸ばしていました。
おっちゃん、このブログは見てないと思うけど、
どうかお元気で。
「N」